アップライトピアノの歴史 |
1709年、当時普及していた鍵盤楽器チェンバロ (ハープシコード)の内部にハンマーの原理を用いてた「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」が発明されました。現在のグランドピアノの原型ともなるこのピアノは、音の強弱を調節できる画期的なものでした。その後は、ダンパー機能の追加や鍵盤の改良、弦の素材の変化などを重ねながら、音量や微弱な音の調節などを可能にし、貴族や王族などの階級に普及していきます。やがて一般市民にも支持されるようになりますが、広まるに従って占有面積の大きいグランドピアノではなく、限られたスペースに設置できる大きさのピアノが求められるようになったのです。
そこで18世紀の中・後期に考案されたのが、弦が水平に張られ形が左右非対称、占有面積の大きい鳥の翼のような形をしたグランドピアノの、鍵盤から先の機構である弦やハンマー、響板などを内蔵した部分を垂直に立て上下に配置するように設計したアップライトピアノでした。水平に広がる専有面積については解決できたものの、当時の形状は現在のアップライトピアノとは大きく異なるもので、グランドピアノの面影を大きく残す形状から「アップライトグランドピアノ」とも呼ばれたのでした。
1745年にフリーデリチが製造したアップライトピアノは、背の高さを解消するため弦を斜めに張ったもので、ピラミッドを縦長にしたような特徴的な形状から「ピラミッドピアノ」と呼ばれました。1795年にストダートが製造したアップライトピアノは、弦を垂直にした構造を持ち、鍵盤部分の背面に本箱状の箱が配置されていました。「キャビネットピアノ」の名前で呼ばれたこのアップライトピアノは、その名前の通りキャビネット(収納棚)としても使用できるユニークなものでした。ほかには、「ジラフピアノ」と呼ばれる、キリンの首のような曲線を持つ装飾的なアップライトピアノが造られたこともありました。いずれも水平の省スペース化や軽量化が可能になったものの、安定感やバランスの面、縦スペースの占有率の大きさなどから改良が必要とされていました。
1800年、アメリカのジョン・アイザック・ホーキンスが製作したアップライトピアノは、ほぼ現在のアップライトピアノの原型となるようなコンパクトにまとまった形状で、鉄製のフレームで響板を支える構造を持ちました。ホーキンスが製作したアップライトピアノは、音量が小さく実験的なものにとどまりましたが、狭い室内に置いて使用できるピアノとしての形状は完成されていました。現在のアップライトピアノは、幅が約1.5m、高さが1.0~1.3m、奥行きが60cm~68cmで、重量200~260kgで、コンパクトな大きさと価格の面から一般家庭での利用が多くなっています。
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