グランドピアノの歴史 |
グランドピアノの元祖といわれている楽器には、ヨーロッパで16世紀から18世紀にかけて使用された、クラヴィコード、チェンバロ (ハープシコード)などがあります。クラヴィコードは、テーブルの上などに置いて演奏する平たい箱型の鍵盤楽器です。鍵盤と響板、共鳴箱からなり、鍵盤を叩くと内部の真鍮の棒が弦を打ち振動で音が出るという打弦式の構造でした。大きさは、幅1.2m~2m、4~6オクターブの音域を持ち、鍵盤を叩くときのタッチの加減によりヴィブラートのような効果を出せるのが特徴でしたが音量は微弱だったといいます。
チェンバロ (ハープシコードとも呼ばれる)は、ルネサンス・バロック音楽で広く用いられた撥弦楽器です。演奏者が鍵盤を叩くと鍵盤につながる薄い板状の部品が持ち上がり、プレクトラムと呼ばれる部位が弦を弾いて音を出すという構造でした。見た目は現在のグランドピアノに似た鳥の羽根のような形状をしていましたが、筐体自体は小さく、タッチによる繊細な音の強弱や大きな音量を出すまでにはいたりませんでした。
現在のグランドピアノの土台となるような鍵盤楽器が登場したのは1709年。イタリアのバルトロメオ・クリストフォリが「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(弱い音と強い音が出せるチェンバロの意味)」を製造したのです。通称「ピアノ・エ・フォルテ 」と呼ばれたこの楽器は、かつてのチェンバロの筐体内に木のハンマーを用いて弦を叩く構造を組み入れたものでした。 鍵盤の数は54鍵、音域も限られてはいましたが、それまで不可能だった演奏者が鍵盤を叩く力を加減することにより音の強弱を出せる機能を持っていました。
その後は、フランスやイギリス、ドイツ・オーストリアなどのピアノ職人達の手で、ハンマーが出す残響音をひざで微調整しながら演奏できるダンパー機能、鍵盤の連打を可能にしたりペダルを用いて音の持続や弱音を制御できたりする機能の追加、細い真鍮線を使用していた弦をピアノ線に変えるなど多くの改良が重ねられました。鍵盤の数が61から63、68、73、85鍵と増え音域も広くなるなど画期的な進化を遂げ、1890年代には現在のグランドピアノと同じ88鍵、7オクターブ1/4のピアノが定着していきました。
19世紀中頃には鋼鉄製の弦が使われ弦の張力は16~20トンにもなりました。この張力に合わせるためにフレームは鋳物製の頑丈なものに変えられ、ほぼ現在のグランドピアノと同等の材質のピアノが完成します。奥行きが1.5m以上、重量が250kg以上にもなるグランドピアノは、個人の職人が製造できる範囲を超えていましたが、19世紀後半にイギリスで起こった産業革命により大量生産が可能になり、ヨーロッパを始め世界中にグランドピアノが広まっていくことになりました。
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